オルガン工房 作業日誌
あるオルガン工房で働いている一従業員のYが
パイプオルガンをテーマに個人的に好き勝手やらかしてるものです。
今までHWにあった Principal 8' II のパイプは前回の記事でSWに移しましたが、Gedakt 8' はその跡地に移設することとなります。
新 Gedakt 8' のパイプは全部で56本。旧 Bourdon 16' の c〜g'''のパイプを新 Gedakt 8' の C〜g''として使い、足りないgs''〜g'''のパイプは新調しました。しかし旧 Principal 8' II はもともと小文字c からしかパイプがなかったため、当然大文字の範囲のパイプのためのスライダーやシュトックの穴はありません。それとパイプを置く場所も。
そんな状況の中、『何とかなりそうな気がするから現場で考えて何とかしてね♪』という親方の素晴らしい指令により、とりあえず開腹sいやパイプをどかしてシュトックを開けて考えた結果、Fs〜Hはスライダーを延長、C〜Fはラーデ上にスライダーを入れるスペースがなかったため新しいシュトックをラーデの下につけることになりました。
HWのラーデの数と配置とパイプの並びは以下のとおり。SWと同じです。

■ Gedakt 8' Fs〜H の設置
以下はCs側 Bass のラーデでの作業風景になります。
コンダクトが邪魔していて見えませんが、工作する部分はラーデの一番前のシュトックです。

作業に邪魔なパイプを外して、邪魔なコンダクトを切って、シュトックを開けてみたところ。
手間から2番目の短いスライダーを片側3音づつ(こっちはCs側なのでG・A・H分)延長します。

まずはスライダーを延長するのに邪魔な、なくても大丈夫なダムを撤去します。
天板にあいてる手前の穴はごみが入らないように養生。

スライダーを延長。
木端をリボン型に切って、それに合うようにスライダー側に窪みを掘って嵌め込んで接着。長さ方向に材を継ぎます。
またスライダーがオンになったときに G・A・H のカンツェーレの真上になる位置に穴をあけます。

延長したスライダーを入れるとこんな感じになります。

天板にも G・A・H のカンツェーレの真上に位置するところに穴をあけます。スライダーがオンになったときにスライダーの穴と天板の穴がぴったり重なるように。
これで鍵盤を押すと風が出るようになった。

シュトックの裏にも、天板やスライダーと同じ位置に穴をあけます。

シュトックの表にはコンダクトを差し込むための穴をあけて、

それぞれのパイプへつなぎます。さてこの木管、もともとどこにあったものかわかります?

ということでスライダー延長分はこれで完成♪
ラーデの下に C〜F のための新しいシュトックをつける作業の様子は、劇場の公式ブログに記録がありますのでそちらをご覧ください。
長くなったので小文字以下はまた今度。
しかし灼熱に焼けた柔らかい鉄を打てれば効率の良いことこの上ないと解っていながらも怠惰な気分に任せて期を逃し、冷めきったそれを前にようやく重たい腰を上げ「堅い」と文句を垂れつつ打ち始める輩も世の中には多少居るわけでして、ええ…。
何が言いたいかというと長期出張は結構前に無事に終わったんだけど出張中の写真の整理をしたので今更ながら記事にしてみたぜよ、ということです。
そう、こういうことはよくあることなんです。
それでは、今まであったSWの Bourdon 16' とHWの Principal 8' II の音色をやめて、それぞれのパイプを入れ替える形でSWに新たに Principal 8' とHWに Gedakt 8'を設置したときの記録。
■SWに Principal 8' を入れる
まず、SWの中を見てみますとラーデが3つありまして、向かって左が C側 の低音部用のラーデでラーデの左から右に向って C から e とパイプが並んでいます。右のラーデは Cs側 低音部用でちょうどC側低音部のラーデと対象にパイプが並んでいます。
真中のラーデは、ラーデ中央から左が C側 のパイプ用、中央から右が Cs側 の パイプがそれぞれ中央から両サイドにむかって低音から高音という配置になっています。

C側 Bass のラーデ。最初の状態。
Bourdon 16' は一番奥の列です。実長8フィートの閉管で、C 〜 h までが木管、c' 以降は金属管です。

Diskant のラーデの Cs側 のパイプ。

C側 Bass 。パイプを外したところ。
シュトックが見えていますが、鍵盤を押すと最終的にシュトックの穴から風が出てきてその上に立っているパイプに風が送られます。
壁にくっついている棒みたいなものが木管のレーネ。レーネにはシュティフテ(金属のぴん)が打ってあって、木管に付いているハフテをそれにひっかけて、パイプを立たせています。
この Bourdon 16' の C〜H のパイプを出すのが、重いわ大きいわ狭いわの三重苦。SWでの作業で一番大変だったかもしれません。
作業するのに邪魔な手前のパイプもある程度外してあります。蹴飛ばして曲げたりしたらいけませんからね。

Cs側 Bass のラーデ。
今回新調した新 Princilal 8' の C 〜 H の Cs側の木管とHWから移設した旧 Principal 8' II のパイプを入れたところ。新しく入れるパイプに合わせてレーネも作りなおしました。

Dskant のパイプを外したところ。

不要になったラスターを外し、工房で作ってきたバンク(ラーデの上に乗ってないシュトック)を壁に取りつけます。シュトックの上にフランジを貼りつけ、シュトックからバンクまでコンダクトで空気を送ります。


このときの作業場は3階の通路。
この空間、椅子に座って作業してると結構落ち着くのよ。
SWの扉を外して臨時の作業台に。「扉=外す」という発想が普通に出ることに気付くといつも、この業界に結構長くいるもんだなぁとしみじみとした気持ちになるものです…。「暑いから窓を外す」も同様。

ラスターの穴をパイプの径に合わせて削ったり、コンダクトをまとめたりして完成。
この Princilap 8' はSWのそれも一番奥にあるので、音が少しでも前に出るようにと、このように他のパイプよりも高く配置してあるのです。
ときにオルガンの調律作業というものは、大変アクロバテイックなものである。
とくにラーデの奥の方にある背の低いパイプを調律するときに筋力は必要である。足場が悪い場合はなおさら。筋力がない場合は翌日筋疲労になる。
シュティムホルンや調律棒を振り回すときにはそれほど要しない。
■ 念力
調律時にあると大変便利。日ごろから鍛練しておきたい項目の一つである。
これさえあれば、手の届かないところにあるパイプの調律もなんのその。モケモケも楽に取り換えられる。
さらに遠くから作業できるので自分の体がパイプに影響することもなく、たとえばパイプの長さを切りたいときも手で持つ必要がないので、大変便利。
念力がある場合は筋力は要らない。
■ 黒子(くろこ)の服
念力が使えない場合は必ず用意しておきたい。オルガンの仕事に携わる者の必須アイテム。
自身の存在感を消すために必要。
調律をするときに「居ないふり」を決め込むことにより、パイプの奴らに存在を悟られずに調律出来るはず。狂っているパイプに近づいたときに「俺たち狂ってないぜ!」とはもう言わせない。
親方レベルの人たちは皆持っている…と誰かから聞いたような。
さて、寝るか…。
先週あたりから休憩室のテーブルの上も甘いもので潤っております。
手作りケーキとかチョコとか、もう食べ終わっちゃって写真にないものもあるのですが
こちらで仕事を始めて以来これまでにもバレンタインに関係なくお土産などを色々な方からありがたくも頂きまして、
皆で幸せなお茶の時間を過ごしています。

さて、皆様の差し入れを前にオルガン部隊皆幸せなんですが、ここにことさら幸せそうな人が一人いました。
オルガン工房電気部新入部員として今回長期出張に初参加したHさんへ
遠く海を隔てた相模の国より届けられた特大ハート型煎餅。
送り主はもちろん奥様です。

Hさんの奥様。
Hさんはハート型の煎餅をご自身のブログに乗せることを渋ったそうですね。
しかし実際は…親方がカメラを向けたところ照れつつもこんなポーズで大人しく納まっているんですよ。
「え〜!?」とか言いつつこの笑顔。これが事実ですので。
この場で奥様にご報告させていただきますね。










